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「It was clear that art and beauty were among those necessary things we had to provide in an emergency. (緊急時に私たちが提供しなければならなかった必要なものの中に、芸術と美が含まれていたことは明らかでした。)」 ロジャー・ ラウザー『美の香り』著者
今年2021年は、東日本大震災から10年目にあたります。また2001年9月11日に米国で起きた同時多発テロ事件からは20年。そして昨年以来、世界的に新型コロナウイルスのパンデミックに見舞われ、数多くの人々が命を落としました…。
生きていると、失うことや悲しみに遭遇します。でも、人生、辛い経験も含め何事も無駄にはならないということを覚えておく必要があります。それらが無駄にならないよう生きていかなければなりません。これらの出来事を経験したことで、私たち自身や、地域、町、都市、国々がより強く、より賢く、より温かく、より明るく、より愛情深くなるでしょう。そういう方向であって欲しいですよね。
ただ、自分の力を信じるということではありません。逆に人間の限界を理解し、弱さを素直に謙虚に認めて受け入れることで、対処の仕方も、見方も、世界観も変わります。空を見上げてみてください。
私がメッセージ性のある絵画、Stars and Desert「星と荒野・砂漠」のシリーズを創った理由と内容を以下に述べます✨💙
絵などのビジュアル・アート(視覚芸術)、音楽、その他様々な形態のアート(芸術)には、私たち自身や他の人々を癒す力、動かす力、視点を変えるがあります。私もまだアーティストでない頃から、個人的にそれらを何度も経験しました。皆さんもちょっと心を開いてみてください。
“Path, Mighty Hue” パス・マイティー・ヒュー 軌跡 (二連画), 断片一部, Misako OBA 大庭みさこ, 2021.
Mixed Media on Canvas キャンバスにミクストメディア, 81x51cm / 32×20 inch
希望と癒しのストーリーを分かち合うため、今年『美の香り』アート・カンファレンス(芸術祭2021)が東京で開催されました。これは東日本大震災10年復興記念のイベントでもありました。
光栄にも、同イベントでの展覧会のお話をいただき、私も参加させていただきました。会場のギャラリーでは、Stars and Desert「星と荒野・砂漠」のシリーズ より、2016年から2021年に制作した作品の中から選んだ約25点が展示されました。
Stars and Desert「星と荒野・砂漠」のシリーズ
私がものを創造・制作する際、根底には「ジャーニー(旅路)としての人生」に対する興味が反映されています。私たちの人生に起こる出来事やゴールを単に「点」ではなく、物事や気持ちの移り変わりを含めた「線」として捉え、喜びや悲しみ、心の葛藤や動揺など、時空を超えて人々が経験する普遍的な感情や人間がおのずと持つ性(さが)のような魂の本質を探り、それをアートとして視覚的に表現。闇の中の光や、一時的なもの、はかないものへの憂いと虚しさ、その性質ゆえの美、そして目には見えない何か大きな力を含めて描写しています。
東京やニューヨークなどの大都市からシアトルに移り住んだときから星に惹かれるようになったのですが、このシリーズは、近隣への旅で、生まれて初めて肉眼で見にした天の川や雄大な荒野に、神の創造を感じるほど感銘を受け、同時に人間の小ささを認識したことが制作のきっかけとなっています。
“Bringing Forth” (二連画), 断片一部, Misako OBA 大庭みさこ, 木製パネルにエンコースティック・ミクストメディア
また、自分の人生を、よく聖書のヨブ記の話と重ね合わせていたこともシリーズ制作の動機のひとつです。
人生には理不尽なことも起こります。究極の災難は、欧米ではよくこのヨブの話と比較されます。善良な彼は、非のない生活をしていましたが、突然次々と無惨な目にあい、全てを失い満身創痍。最終的に神とその愛を信頼することで、神様の取り計らいによって全てが二倍になって戻り余生を祝福されました。
予期せぬ喪失。困難や災いなどは突然一挙にやってきたりします。私も子供や家庭や指などほか、大切なものを次々と失い、十万人に一人といわれる悲劇に30代で二度も見舞われ、例えようのない悲しみや苦痛もあり満身創痍。心もバキバキに折れ打ちのめされました。が、その都度、比較的早く立ち直ることができ、起ったすべてを含めて与えられたものに感謝することさえ可能だということを経験しました。
それは私の力ではなく、聖書のヨブ記の主人公のように壮大な天に輝く星を見上げ、万物の創造主の完全なコントロールと愛を信じ、認識することでネガティブな感情も変わり、人生の結果も変わることを知ったのです。
実際人間にはどんなに頑張ってもできないことや止められないもの(死や天災ほか)があります。そのことを認める一方、空の光(太陽や月や星)を作り、星と星を互いに結びつけたり(星座)、天空に星々を散りばめオリオン座の紐を緩めることもでき、広大な自然から分子レベルまで司ることができる天地の創造主・神は、私たちの人生の旅路を見守っていて、ヨブのように状況に関わらずfaith(信仰・信じる心)がある人には多大な祝福もあることを思うとき、神様にゆだねるという選択肢も入ってきて重荷がとれ、安らぎも訪れます。
そして過酷な「砂漠・荒野の時間」の中でさえ、平安な気持ちは芽生えうると。
同じ条件や状況下でも、視点や価値観、反応や対応の仕方によって、その人自身の幸せ度やその後の人生、時には状況さえも変わってきます。
そこで、アートを通して、その着眼点と希望、癒しや愛を、分かち合おうと考え、2014年頃からこのシリーズを制作し始め、現在もプロジェクトとして継続中です。(米国では個展や企画展多数、ある意味パンデミックを機に国内やヨーロッパでも発表の機会をいただくようになりました)
[Rising Higher with HIM (ライジング・ハイヤー・ウィズ・ヒム)] , Misako OBA 大庭みさこ, 2021. ミクストメディア, 一部 (全体は下記)
10年ほど前から取り組んでいる、古典の百人一首の内容を現代人の感情とすり合わせて追求したシリーズ「Beyond Time and Space(時空を超えて)」同様、この「Stars and Desert(星と荒野・砂漠)」のシリーズも、一つの作品には意図的に、古典と現代の要素が相互に響き合い、融合するように作っています。私のアートには、記憶、思考、幻想、幻滅、夢、希望、道などの層が織り重なっています。
同シリーズは、古典でもあり、時代を超越して現代にも適用できる聖書の言葉の中から、星と荒野 (desert, wilderness) に焦点をあて制作。挿絵のように言葉の内容を文字通り説明するように描いているわけではありません。該当箇所の背景や意味を咀嚼し、イマジネーションも使って「思考・感情・魂」をシンクロさせながら、ブロークンな壊れた世界、この世の悲哀を込めつつも、感謝と喜び、希望と期待感を持った心で制作しているシリーズです。
自分の経験からの感情を交錯させつつ、様々な言語(英語、フランス語、ヘブライ語、ギリシャ語など)での抽象的なコラージュを含め、星と相関性のある天文学的な計算アルゴリズムである現代のコンピュータープログラミング言語(コード)と共に、蜜ろうを使ったエンコースティックやミクストメディアに取り入れています。
私がかつてアンリ・カルティエ・ブレッソンなどのアートに救われたように、アートの使命でもある「見る人に問いを投げかけるとともに、思いを巡らし、新たな視点 (Perspective)、気づきと、再考」のきっかけとなれば幸いです。
[パス・マイティー・ヒュー 軌跡] (二連画), Misako OBA 大庭みさこ, 2021. キャンバスにミクストメディア, 81x51cm/32×20 inch
創造主が実際に “砂漠の中に小川” を作ってくれたかのような驚くべきスムーズな導きも経験し、アート制作やフェイス(信念・信仰)、自分や他人の人生等に、良い意味で影響しています。
「星の数をも知り限界がないという神様は傷ついた人の心を癒し…」と、聖書の詩篇などで述べているように、神は確かに求めれば癒してくれることを体験したので、皆さんにも少しでも役立てばと共有させていただきます。
主は心の打ち砕かれた者をいやし彼らの傷を包む。主は星の数を数え、そのすべてに名をつける。われらの主は偉大であり、力に富み、その英知は計りがたい。
(詩篇147章3〜5節)
この聖句は、2014年当初、以下の「Heals the Brokenhearted (折れた心を癒す)」 などの、蜜ろうを使ったエンコースティック・ミクスト・メディアのアートとなり、以降シリーズが続いています。
“Heals the Brokenhearted,” 大庭みさこ Misako OBA, エンコースティック・ミクスト・メディア。星と荒野・砂漠のシリーズより。木製フローターフレーム入り。約23x23x2.5cm/9x9x1 inch
今年の東京での芸術祭2021「美の香り」にあたって、新作「Rising Higher with HIM (ライジング・ハイヤー・ウィズ・ヒム)」も詩篇147章3〜5節を元に創ってみました。東日本大震災ほか様々な震災や個人的な苦悩で未だ傷が癒えない人々のために、あるいは立ち直ったけれども更に高く飛躍したい人のために、祈りを込めて制作しました。
日本語にすると、「彼とともにより高く飛翔する」という意味のタイトルです。英語で大文字のHIM(彼)は神様イエスキリストのことを示していますが、私たちより力のある「神様と共に」という意味と、「ひとりではなく彼や彼女や他の誰かと共に」という意味も含んでいます。
人間の力ではどうしようもないことに直面した時の生きるヒントにもなることを願っています。
“Rising Higher with HIM” from Stars and Desert Series, Misako OBA, 2021.
Mixed Media on Canvas. F20 (approx. 73×61 cm/ 29×24 inch)
“Rising Higher with HIM” (detail), Misako Oba
科学者や専門家は星や宇宙のパターンや詳細を絶えず研究していますが、それでも人間の知識や理解を超えた目に見えないものがあります。私はこれを概念的かつ心理的なアプローチで反映・探求していています。
アート作品や私たちの人生は、よく見れば、細部が浮かび上がるかもしれません。しかし、時として「大切なものは目に見えない」ことも多いのです。
これは「星と荒野・砂漠」プロジェクトの中でも L.I.P.Y. (大切なものは目に見えない)という作品群・シリーズになりました。
『星の王子様』にでくる言葉が頭に浮かびます。同時に以下にも共通しているメッセージを見つけ、こちらもアート作品になっています。
「私たちは、見えるものにではなく、見えないものにこそ目を留めます。見えるものは一時的であり、見えないものはいつまでも続くからです。」(第二 コリント人への手紙 4章18節)
アートがよく理解できない、という人も心配いりません。辛く厳しい時でも、ただ、オープンな心とちょっとした好奇心があれば大丈夫。小さな一歩で充分。そのことを頭に入れておくと、向こうから近づいてきてくれます。そしてあたなを勇気付け、明るく照らしてくれ、エネルギーを与えてくれるでしょう!そして本来の能力と再びつながり、あなたの可能性を引き出してくれるに違いありません!😊
これからです。ライジング・ハイヤー、より高く飛翔〜! ✨
イベントのハイライト・ビデオ
ビデオ by コミュニティーアーツ東京
そして、今年の芸術祭(アート・カンファレンス)では、アートは余裕のある時だけの「贅沢品」ではなく、緊急時にこそ人々の心に必要な「必需品」であることを、アーティストの私自身も、改めて学びました。そのため、私たちアーティストは、困難な状況にあっても出来る限り提供するよう努めています。
同展覧会にあたっては、雨の中、ご来場いただいた方々はもちろん、ギャラリー展示にあたり、数ヶ月前からの事前打ち合わせ・準備、コロナ禍の中の会場設営・撤収、その他、関わってくれた全てのスタッフやボランティアの方々にも大感謝の拍手👏を送りたいと思います。ありがとうございました。また、ブログをここまで読んでくださった方もありがとうございます。😊
会場ではご高覧いただく展示のみでアートの販売はしていませんでしたが、現在、直接注文を承っています。このシリーズに興味のある方はこちらからご連絡くださいね。非売品や、すでにお問い合わせをいただき売約済みのもの、またヨーロッパの画廊が担当になった作品もあって動いているので、興味があってご連絡くださった方には、新作も含め現在お出しできるリスト等をお送りします。
皆様に天からの豊かな祝福がありますように✨
アート・カンファレンス 2021 「Aroma of Beauty 美の香り」国際芸術際。大庭みさこの「Stars and Desert (星と荒野・砂漠) のシリーズ」より約25点が会場のギャラリーに展示(東京)
*英語ページはこちら。日・英は直訳ではありませんので、英語がちょっとでもわかる方は是非!
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