エンコースティック作品の取り扱い (Proper Care of Encaustic Art)

    ※ In English: 英語版はこちら

お待たせ致しました! アートに関して、いろいろとリクエストをいただいており、中でも日本国内の方々から「エンコースティック・アートの取り扱い、保管方法」に対するご質問や記事の依頼もだいぶ前からいただいていた中、ついに日本語で掲載します!

そしてこの場をお借りして、昨今、そしてもちろん過去も含めて私のアートをご購入いただいた方々に深く感謝いたします。💕 制作中は必ずしも「単に楽しい」というわけではありませんが、作品はすべて、「大切な愛すべき人」や「貴重な宝石」のようなものです。私の愛、魂、気持ち、アイデア、イマジネーション、思考、知識、コンセプト、経験、そして私たちの生きている時代が、作品に凝縮されています。こういった「レイヤー(層)を重ねる」という点で、エンコースティックはまさに私に適している画材・手法でもあります。

"Morning Star Sang #3" -Revelation 22:16 by Misako Oba

“Morning Star Sang #3” -Revelation 22:16, 大庭みさこ. エンコースティック・ミクストメディア (sold). 新たな持ち主を見つけた作品。触れる人々の人生や気持ちが豊かに祝福されますように

創ったアートを手放すのが惜しかったりもしますが(笑)、新しい所有者・コレクターの方々が興味を持ってエキサイトしてくれるのをまのあたりにすると、私も更なる大きな喜びとエネルギーを感じます。作品たちが、新しい家や会社・オフィスほか様々な場所で、それらに触れる人々を祝福し、人生や気持ちが豊かになるよう、いつも祈っています。

さて、エンコースティックの画材自体、海外でも油彩などに比べても高価で、技法もバリエーションに富んで手間がかかるため、国内ではさらにこの技法を主に使っている美術家・アーティストは多くないため、確かに日本語での情報は英語に比べて少ないようです。「取り扱い方」は、気になるところかもしれません。ちなみに、今回このページにあげているアートはすべて「 Stars and Desert (星と荒野・砂漠)」のシリーズからです。

今回は購入者目線でお伝えしますが、これからエンコースティックをやってみようという制作者側の方々にも役立つと思います。

まず一番聞かれるのが、

エンコースティック作品の蝋(ろう)は暑い時期、溶けてしまわないの?  

大丈夫です、溶けません。確かに日本の夏は非常に暑いですが💦、エンコースティックの構成要素である蜜ろうは通常、約65℃前後、蜜ろうを原材料としたエンコースティック絵具やメディウムは 71℃(160°F)前後で柔らかくなり始めますので、通常の生活環境で、飾ったり、保管したりする限り、問題ありません。エンコースティックは、蜜ろうに天然ダンマル樹脂(レジン)を加えたものなので、単なる蜜ろうや蜜ろう画よりも強固で 耐久性があります 。制作時は、通常93℃ (200ºF) 以上にならないと、このろう絵具エンコースティックは溶けません。

ただ一概にエンコースティック作品といってもアーティストによって使用する材料、あるいは独自に作るエンコースティック絵具の構成要素(天然ダンマル樹脂と蜜ろうの比率)によっても、溶け始め温度が多少変わります。多くの本格的なアーティスト同様、私も通常自分で作るのですが、硬さや溶解温度は「レシピ」によって変わります。

通常、エンコースティック・アートは、1.7℃〜48.9℃ (35〜120ºF)の間で保管する必要があると言われているので、このぐらいの温度を頭に入れておけば安全です。

ということで、購入したアートが溶けてしまうことはほぼ稀です。ただし、うっかり….

👉 <重要>
X 夏に駐車中の車の中に放置するのは、短時間でも高温になる可能性があるので、気をつけてください。特に作品を移動中・輸送中の温度変化にも注意が必要です。

溶けなくても、過度な高温で作品が傷んでしまいます。エンコースティックに限らず、油彩や水彩、ファインアート写真等、他種のアート・美術品でも同様ですね。

以下は避けて保管・飾ってください

X 直射日光のあたる場所

X 湿気の多い場所(お風呂場/洗面所等)

X 極端に暑い場所、寒い場所 

X アイロンや台所のコンロオーブン、冷蔵庫の近く、ストーブ等暖房機器ほかの家電・機械類等で熱を発する物に接触しないように
これらで溶ける可能性もあります。

○ 通常の室温が保てる場所、冷房や暖房で、ある程度、温度管理ができる場所に飾るのがオススメです。(例えばリビングルームや寝室、廊下、玄関先、オフィスなど:それぞれの家屋やビルによって条件は異なると思います)

“Stars to Give Light 〜光を放つ星々〜 Genesis 1:16, 17” (左) と、“What Is Unseen Is Eternal 〜不過視なものは永遠に〜2 Corinthians 4:16, 18” (右), 大庭みさこ, 木製パネルにエンコースティック・ミクストメディア、木製白フローターフレーム入り. (Sold)

 額装について

"Let There Be Light" by Misako Oba

“Let There Be Light,” 大庭みさこ。 木製パネルにエンコースティック・ミクスト・メディア。 木製フローター・フレーム入り(Sold)

エンコースティック作品はガラスで保護する必要はありません。しかし、作品の扱い方やアーティストによって、エッジ(縁)や表面の仕上げ方が異なるので、作品によっては壊れやすかったり、移動や何かの拍子で、縁が欠けたりすることがあるので、気をつけてください。(エーンコースティック初心者のアーティストは、各レイヤーごとに、充分融合させることが重要です。ヒートガンやガスバーナー等で。充分でないと数ヶ月後、数年後にはがれることもあります )。

私が使っているフローター・フレームは、エンコースティックの縁が欠けないように保護する役割も担っています。額装が必要ない箱型木製パネルを使う場合も多いです。キャンバスにエンコースティックは通常厳禁ですが(例外あり)、紙に描いた作品は、下に硬いマットボードや木製パネルを付け安定させてください。この場合ガラスの下に額装した方がいいかもしれません。マットはアシッド・フリー(acid-free 無酸性)の品質のものがオススメ。購入したアートをご自身で額装される場合、ガラスが作品に触れないようにしてください。マットを使ったり、シャドーボックスフレームなどで浮かせることで、触れないようにできます。(額装専門店にご相談ください。私の作品の場合は購入前、購入時に相談ください。

また万一、落として欠けてしまったり、あるいは壊れた場合、「金継ぎ」のように魅力的に修復・変身させることも可能、アフターサービスも行っています。漆でなくエンコースティックや適した関連材料を使います✨お気軽にお問い合わせください。)

アートを持ち運んだり郵送したり移動したりする場合      

Art with soft foam sheet n glassine

表面をグラシン紙等で覆い、柔らかいフォームシートで包む

保管ではなく、輸送用に梱包したりする際には、絵の表面をワックスペーパーパーチメントペーパー(クッキングシート)で覆ってください。(下記に出てくるグラシン紙でももちろん良いですが、長期保管ではなく一時的なカバーなので、入手しやすいクッキングシート等でOKです)。それから、柔らかいフォームシート(写真右)、もしくは柔らかい紙、柔らかい布、あるいは短時間の輸送の場合、額や作品を傷つけなければこれらのペーパーで包んでも大丈夫でしょう。いずれも白色が色移りがなく安全です。

その後、バブルラップ(プチプチ)で包む際は、エアキャップの突起したプチプチ面が作品に接しないよう、外側にします。作品に接する面はフラットの面。アート表面にプチプチの跡が残らないようにするためです。(特にエンコースティックの場合は、作品に直接プチプチを使用しないでください)

大型作品を移動・送る場合は、サイズや重さによっては、作品保護のため、二重の箱(内箱と外箱)や、クレート(木箱)の構築が必要になります。

アートを保管する場合

気分をリフレッシュさせるために、自宅やオフィスの模様替えをしたり、複数のアートをローテーションして飾る場合、次に壁に飾られるまで一時的に、クローゼットや倉庫に保管することがあるかもしれません。

私からアートを購入された場合は、通常、作品の長期保存に適したアシッド・フリー(無酸性)のグラシン紙を、作品の表面にのせています。他の梱包材や紙は捨てても構いませんが、(作品の表面に触れている一番中に使っている半透明の)そのグラシン紙はとっておいて、保管する際に使われるとよいでしょう。再利用できるように、テープなしか、できるたけ綺麗にはがせるようにしています。

テープも作品に接する場合は、無酸性のものを使っているので、できればとっておかれた方がいいかもしれません。でも、ずっと壁に飾られるようでしたら破棄しても構いません。グラシン紙は画材店やアマゾン等でも販売していると思いますが、国内だと酸性のものも多いので、注意が必要です。劣化を防ぐため、必ず、アシッド・フリー (acid-free 無酸性)の紙を選んでください。(中性紙でも悪くはないですが、できれば無酸性を)。グラシン紙でなくても無酸性の、トレーシングペーパー(写真下)でもいいと思います。私もよく使います。

長期保管用には、ワックスペーパーやクッキングシートは、無酸性ではないので、避けた方がいいです。全項目で触れたように極端な温度環境や高い湿度は避け、風通しのよい冷暗所がいいでしょう。

👉 屋根裏部屋にはご注意! (余談?!)

最近の国内家屋のことはよくわかりませんが、アメリカだと、よくアティック(屋根裏部屋)を倉庫にしていて、そこに通常使わない家庭用品なども収納します。私は一度、完成したエンコースティックアートの作品群を(すべてではありませんが)20点ほど屋根裏に保管していました。例年、クーラーもいらないほど涼しいはずの夏のシアトルですが、留守にしていたその年に限って猛暑!!
当時のアシスタント君から「屋根裏は異常に暑くなるから、エンコースティックは溶けるんじゃない?!」との警告連絡を受け、二人とも秋までシアトルには戻れない状況で、私は超パニーーーック!😱
せっかく作ったアートが溶けるかも。と気がきではありませんでした。

ということで、その時に調べて出た結論が、やはり屋根裏部屋での保管は気をつけよう、でした。

外の気温が、35-36℃ 程度でも、屋根裏部屋は 65.5- 71.1℃にもなりえるということを知りました。 猛暑の夏、これでは前述した安全な気温範囲からはみ出てしまって、アウトです!
屋根裏部屋でも換気が充分な場合はまた気温も下がります。が、出入りのないところでは当然高温。

幸運にもその屋根裏部屋部分は、木陰になっていたので、溶けずにすみました💦。もう、あせりまくりました。

みなさんも、高温になりそうな部屋には保管しないようお気をつけください。

 

👉 注目! エンコースティックならではの特徴
白くくすんでくる「ブルーム」が発生したら…. 

ストッキングで

ストッキングなど柔らかい布で優しくこすると、ブルームがとれる。凹凸部分はしない。

作品が完成してから1~3年は、ろうが硬化し続け硬くなります。特に最初の6〜12ヶ月間、もしくはそれ以後もエンコースティックの表面に「ブルーム」というものが発生し、少し白く霞んだような表面になることが多いですが、これは正常で自然な現象です。このマット感のあるツヤ消しが好きという人もいれば、曇りを取り除いて光沢感を出したいという人もいます。ブルームをとりたいときは、糸くずの出ない柔らかい布で表面をやさしく拭いて取り除いてください。こするほどに光沢が出てきます。こすり具合には気をつけてください。磨き具合により最初より光沢感が増す場合があります。その辺はお好みで。拭くのに、実はナイロン・ストッキングも効果的です!メガネ拭きでもいいかも。

ただ、文字や凸凹したテクスチャー部分はこすらないようにしてください。ブルームで本来見えた文字が見えなくなってしまった場合は、少しづつ、優しく行ってください。主に、ブルームが出た表面が平らなろうの部分を行うだけです。 以下、ご参考まで。


このように磨くのを繰り返して大丈夫です。時間が経つにつれ、表面の光沢は保てるようになるでしょう。わからないことがあれば、それぞれの作品の作者・アーティストや購入された画廊に相談してください

  白い綿の手袋

white glove

White Soft Cotton Gloves

特にアート作品、原画を取り扱う前には、必ず手をきれいに洗うよう心がけてください。基本ですけど。一般に美術品を扱う際には、可能な限り白い綿などの手袋を使用することをお勧めします。

アクリル画などキャンバスのアートやエンコースティック・アートは、ファインアート写真などのプリント作品に比べると、指紋などがついても目立ちにくいので、そこまで神経質になる必要がありません。紙の作品や写真などのプリントは額装のマットでさえ、手の指紋や汗、油分で傷みますし、触った部分が時間とともに変色していきます。一方、エンコースティックやアクリル画など、作品の種類・形よっては素手で扱ってもダメージを受けないこともあります。ちょっとリラックスした気持ちで作品を扱うことができますね。(でも手に汗や汚れがついていると、やはり作品に移り、傷みますよ!)

むやみに表面には触らない方が無難ですが、実際エンコースティックの表面が平らな場合は、(文字部分や突起部分はオススメしませんが)、清潔な手で触っても結構大丈夫だったりします。ツヤが出たりして。もし触った後は綺麗な柔らかい布、あるいは白い手袋でやさしく拭いておきましょう。

特に、淡い色の作品や白色のフレームの場合は、手袋をした方が安心して扱うことができます。

エンコースティックってアーカバル(長期保存)がきくの?

イエス!エンコースティックは多々ある画材・絵の具の中でも、とても優秀です。

以前、掲載したエンコースティックの記事の中にも書きましたが、耐水性があり、素材を密封して保存することができるため、紀元前古代ギリシャ時代から、船のコーキングなどにも使われるほど、耐久性があります。1世紀頃のエジプトの墓のカラフルな肖像画が、現在でも美術館で見られるように、何千年も耐えることができるエンコースティックは長期保存が可能な画材です。.*1  

“このような性質も持っているのでの船にも描けるし、太陽や風、塩水の影響で腐ることはないのです。” *2

もちろん、素材や顔料の質にもよりますが、エンコースティック、蜜ろうは劣化しないといわれ、素晴らしい性質を持っています。が、それでも直射日光・紫外線に長時間さらされると、色が褪せたり、メディウムの結合力が弱くなる可能性があるでしょう。特に、作品にインクや水彩、油彩、コラージュなどの他の媒体が含まれているミクストメディアの場合はなおさらです。私のアートも、エンコースティックのみでなくミクスト・メディアも多いので、これに相当します。いずれにしても日当たりの良すぎる場所、直射日光は避けるのがベストです。

アーティストの中には、長期保存に適した素材(たとえば無酸性)にこだわっていなかったり、文字やプリント画像の転写やコラージュに、家庭用プリンターに多い「染料インク」や、企業などに多い「トナーインク」を使ったプリントを使う人も多いです。しかし、染料インクのものは、数年、十数年という時間の経過とともに色あせているのを何度も目にしました。これらも日当たりの良い場所に置いていると更に加速します。数年から数十年持てば良い商業用や趣味の作品であればそれで十分ですが、できれば何百年も持たせたい世界標準の美術用のものとは、やはり異なります。

長期保存に向いていないインクや絵具を、エンコースティックで覆うことで、少しは新鮮な色を保つことができるかもしれませんが、保証はできません。ですから、やはり私は作品の文字テキストには写真用プリンターのアーカイバル顔料インクを使い、コラージュにも可能な限りアシッド・フリー(無酸性)の素材を使っています。美術館の収蔵や次世代までのことを考慮すると、責任もあり、作品の寿命を長く保つために品質を大切にしています。この点でもエンコースティックは良い画材といえます。

たまたま私の場合は、写真家の経歴があるので長期保存・アーカイバルに関する知識と経験は自然と備り、やはりファインアート、美術品として適している質の良い素材にこだわってきました。その影響でアート制作も、使用する紙やインク、すべてののり、テープ、基材や絵具・顔料ほか、常にアーティストグレードのもの、長期保存に適したものを可能な限り使っています。

スケッチブックや額装のマットも含め、この「アシッド・フリー(acid-free)」や「アーカイバル(archival)」等の表記が国内製品にはほとんどなく、画材店や紙専門店で聞いてもピンときていなかったり、なかったことも多いので、結局、表記があって品質も安心して使える欧米のものを使っています。

美術より短期間の商業文化中心の日本では製造側もそこまで長期保存の質にこだわる必要がないのかもしれませんね。

飾る状態や保存状態で持ち具合は変わるので、作品を取り扱う人にもかかっています。適切な取り扱いは必要ですね! 作品の寿命もそれで決まります。

以上、少しでもお役に立てば幸いです。😊

もしまたご質問がありましたら、Contactからどうぞ!

 

*1 何年も前にエンコースティックを始めた際、複数の関連書籍で調べたり、ニューヨーク州の R&F Paints基本のクラスをとった時、これら歴史的なことも学びました。
*2 [出典]   

 

To English 英語版はこちら

 

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About misako

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1 Response to エンコースティック作品の取り扱い (Proper Care of Encaustic Art)

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